- 2020-3-24
- 転職体験談・コラム
生来の怠け者で毎日「働きたくない……」と思いながら生きている僕が、一度だけ就職して社内ニートをやっていた頃の話をしてみようと思う。
今から十数年前の大学生の頃の僕も、やっぱり「働きたくない……就職とか無理だ……」と毎日思っていた。
毎朝決まった時間に起きるとか、毎日電車に乗るとか、毎日人に会って「いつもお世話になっております」とか意味のわからない挨拶をするとか、立ち上がって名刺を交換したり飲み会でビールを注いだりみたいな謎のマナーとか、そんな真っ当な人間ぽいことが自分みたいなダメ人間には絶対に務まる気がしない。別にやりたい仕事とかないし一生家で本を読んでたい。社会怖い。
だけどそうは言ってもいつまでも学生でいるわけにもいかなくて、卒業後の進路をどうするか決めざるを得ない状況になってくる。そこで悩んだ末に僕が思ったのは「新卒で就職というカードを使って、できるだけ楽そうな職場に入って一度だけサラリーマンをやってみよう。ダメだったら辞めたらいいし」ということだった。
死ぬほど嫌いなスーツを着て、神経を磨り減らしながら「就活」というもう二度とやりたくない理不尽な通過儀礼をやってみたら、多分働く気のなさを見透かされたせいで大体ほとんどは落ちたのだけど、たまたま一つだけ僕を雇ってくれるという会社があって、そこに潜り込んだ。そうしたら、その職場は仕事がほとんどない社内ニート的な理想環境だったのだ。
社内ニートとは言っても、全く仕事がないわけじゃなかったんだけど、一日の仕事は2、3時間くらいで終わる簡単なものだった。一日8時間勤務のうち残りの時間は特にやることがなかった。でも、遊んでるように見られると仕事を増やされるかもしれないので、ずっとパソコンに向かって仕事をしているふりをしながらスパイダソリティアというトランプゲームをひたすら何千回もやっていた。
なぜそんな社内ニートという状況が成立したのか。その理由は大体以下のような感じだろうと思う。
1.大きな組織の片隅の部署だった
社員数人とか数十人とかの小さな会社であまり仕事をしてない奴がいるとすぐ目立つけど、大きな会社の隅っこのほうの目立たない部署だと仕事をしていなくてもあまり目立たない。大きな組織ほど忙しい部署に人を柔軟に配置するという柔軟性が少なくて、仕事があまりないままの部署がなんとなく放置されていたりする。僕が配置された職場も、昔は普通に仕事があったけどだんだん少なくなっていって、だけどポストは昔のままで残っている、という過渡的な状態だったようだ。
2.他人に白い目で見られても気にしなかった
多分僕があんまり仕事してないのは薄々周りの人にもバレていただろうと思う。なので「もうちょっとこういう仕事をしてみないか」「いろいろ挑戦してみないか」みたいな話をされたりもしたんだけど、そういう話にも「いや、今でもういっぱいいっぱいなんで……」と言って断り続けた。まあ、毎日起きて通勤するだけで精一杯だったのは事実だったけど。ときどき朝起きるのがつらいというだけの理由で仮病を使って休んでいたし。周りには変人と思われていただろうけど、会社には全く話の合う人がいなかったし、価値観の違う人にどう見られようがどうでもよかった。
そんな感じでしばらく勤めていたんだけど、結局僕はやっぱり週5日通勤して机と椅子に拘束されて仕事をしているふりをし続けるのが苦痛で、しばらくしてから会社を辞めて本物のニートになってしまった。
でもまあ、あのままあの会社にいたとしても社内ニート的な身分はずっとは続かなさそうな感じもあった。少しずつ仕事が増えてくる兆候はあったし。多分近いうちに「あいつそろそろなんとかしなきゃな」みたいな感じで異動させられるか仕事を割り振られるかして普通に働かされていただろう。
結局どういう場合に社内ニート的な状況が発生するかというと、人事の柔軟性の少ない大きな組織の隅っこのほうに、人はいるのに仕事があまりないというポジションが過渡的に発生することがあるけれど、それはそんなに長くは続かない。せいぜい長くて1〜2年くらいじゃないだろうか。で、たまたまそういう状況のところに僕は幸か不幸か巡りあったという感じだ。
以上、社内ニートになりたい若者の方々や社内ニートを防止したい管理職の方々に知見をご活用いただければ幸いです。
著者プロフィール
pha
毎日寝て暮らしたいと思っている36歳男。著書として『持たない幸福論』(幻冬舎)『ニートの歩き方』(技術評論社)などがある。ブログ: phaの日記
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