転職離職は計画的に

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転職や離職は計画的にしていただきたい。そう切に願う。
というのも無計画な転職離職は大きなダメージとなり、その後の人生にキズを残しかねないからである。
なぜ、私がこのような暗い話をするかといえば、私自身が仕事と職場が嫌になった、その勢いだけで何の考えも簡単な計画すらもなく離職してしまい人生に深刻なダメージを受け、今もめそめそ泣きべそをかいているからだ。
皆さんにはこんな思いはしてほしくない。

かれこれ十数年前のことだ。何の計画も思慮もなく職を辞した私はとりあえず管轄のハローワークで求職の申し込みをした。それから3ヶ月間はふらふらと職を決めるという気概やヤル気に欠けた求職活動に終始した…。
なぜなら完全なる自己都合で離職した私には3ヶ月間失業手当が支給されないからだ。

せっかくなら手当を貰いたい。そうした浅はかな考えから私は極めてテキトーな求職活動を行ってしまった。もちろん、いい仕事があれば決めただろうが、中途半端な求職活動では奇跡でも起こらないかぎりそのような職が見つかるはずがない。
3ヶ月が経過し、いざ、本腰を入れて職を見つけようとした私は途方に暮れてしまう。
求職活動の難易度の高さに。言いかえれば面接の難易度の高さに。

面接では数ヶ月間もの空白期間の理由を突かれるようになった。
微力な求職者である私に数人がかりの面接官が圧力をかけてくる。流れる汗。
必死のアピールをする私に面接官たちは決まってこのような質問を言うのだ。
「何ヶ月も働いてないよね。計画性ないの?」返す言葉がない。
あればこんな事態にはなっていない。ないからこそ理不尽な圧力をかけられているのだ。

イジワルな質問だ。私は「ブレードランナー」という映画で、レプリカントといわれる人間そっくりのアンドロイドを識別するためのイジワルな質問を連想してしまう。
映画では質問にイラついたレプリカントは暴発してしまっていた。
私は無職だ。しかし無職である前に一人の人間だ。私は人間らしく感情を爆発させ、「計画性がないからこんな面接を受けているのです」と正直に答えた。
正直さが良かったのだろうか、なぜか採用されたけれども、気まずいので辞退させていただいた。

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ハローワーク通いは続いた。毎朝通ううちに顔見知りが出来た。
どうだった?ダメだった。俺も。そんな役に立たないキズの舐め合いに嫌気がさす。時々ハローワークの前で「即採用明日から働ける」という謎の求人をしている会社の人を見かけた。
なんだか胡散臭いので避けていたのだが、無職が数ヶ月に及んでいた無計画な私は、その怪しい求人にコンタクトしてしまう。

その会社と与えられた仕事はひとことでいうならクソ地獄であった。
具体的な業種や職種をここで開示するのは危険なので、曖昧に述べさせいただくが、地元一帯で展開している太陽光ソーラー会社の新規開発営業であった。
太陽光ソーラーといっても昨今話題の自家太陽発電ではなく屋根の上に設置したタンクを利用して太陽熱でお湯を沸かすアレである。

私は翌日からその仕事をはじめた。午前中にごく簡単な研修を終えると、何人かの同期とライトバンに乗せられて住宅地に落とされた。地図とパンフレットだけを渡された私はいきなりノルマを与えられての営業活動。ノルマは正規社員と変わらなかった。
給与は研修中という理由で時給制でその額も研修中という理由で地域別最低賃金よりもかなり低いものだった。

初日は成果ゼロ。事務所に帰ると「役立たず」「遊んでいるのか」「ガキの使いか」と酷い叱責を浴びせられ二日目、同期は誰も現れない。
初日とほぼ同じ内容の1日を繰り返して叱責を受け、私は二日目で逃走した。
その頃の私は、計画的に離職すれば良かったと毎日のように悔やんでいた。

面接とは受け答えや自己アピールといった内容だけでなく写真や身だしなみまでが試され見られる場である。無計画のせいで数ヶ月にわたって無職が続いていると、余裕が無くなってきて難易度が上がってしまう。これをやったらゲームオーバー。あれをいったらジエンド。
というように。追い詰められ、面接に失敗してしまう。

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とある零細企業の面接を受けたとき、私は最大の危機に直面した。面接は社長さんが一人でやってくれることになっていた。
「やあ、お待たせ」といって応接室にあらわれた社長を見て私は度肝を抜かれた。
社長の薄くなった頭には大きなクモが足を伸ばして貼りついていた。リアルスパイダーマン。
社長は私を試すようにずいと前に乗り出し「前職は?」「結婚は?」と質問を浴びせてくる。

私は混乱していた。面接とは内容だけでなくその場その時間を総合的に見て判断が下されるものだ。スパイダーマンは私を試しているのだろう。しかし正解がわからない。
もしカツラ代わりにクモを額に貼り付けているとしたらクモをはがすことはすなわちカツラをはがすことと同義となり面接は失敗。
また、一人の男がクモを額に貼り付いているような非常事態に出くわした際のリスクコントロールを観察しているのなら速攻でクモを殲滅しなければならないだろう。

取って差し上げるべきか。教えて差し上げるべきか。黙殺か。
クモが大嫌いな私は涙目で目をそらすしかなかった。
そんな僕に「サナちゃんが無理ならここで働くのは難しいね」と社長は寂しそうに言った。
サナちゃんがいるかぎりこちらから願い下げだ。こんな目に遭うのもすべて無計画のせいだ。

その後、貯金も尽き経済的に追い詰められた私はハローワークで紹介してもらった会社に適当に応募、採用され、散々なまま現在に至る。
あの退職の際にしっかりと計画さえしていれば…そう後悔しながら冷や飯を喰らう毎日だ。
マジで退職と転職は計画的にした方がいい。現場からは以上です。

著者プロフィール

fumiko100

フミコフミオ

海辺の町でロックンロールを叫ぶ不惑の会社員です。ここ10年は食品業界の片隅で生息しております。90年代末からWeb日記で恥を綴り続けて15年、現在の主戦場ははてなブログ。内容はナッシング。けれどもなぜか上から目線。更新はおっさんの不整脈並みに不定期。でも、それがロックってもんだろう?ピース!

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